nagomiの成果データ
科学的なデータに基づく介護予防プログラムの研究開発機関である㈱つくばウエルネスリサーチ(代表取締役社長:久野譜也医学博士)と協同で、nagomiの新規利用者の入所から3ヶ月の身体機能と日常生活の変化を科学的に分析し、その成果データを以下にまとめました。
リハビリデイサービスnagomi利用者の体力レベルおよび運動実施によるトレーニング効果について
目的
リハビリデイサービスnagomiの通所者の体力レベルおよび運動実施によるトレーニング効果について検討すること。
方法
1.対象者
介護保険法による要介護認定を受け、リハビリデイサービス「nagomi」を利用している高齢男性31名、及び高齢女性89名の合計120名
(新規利用者138人中、介入期間3ヶ月の利用回数が10回以上の方120名を対象とする。)
2.運動提供期間
3ヶ月間
3.評価項目
① 体力
・握力 (筋力)
・ファンクショナルリーチ (動的バランス能力)
・開眼片足立ち (静的バランス能力)
・椅子立ち座り (下肢筋力)
・5M歩行(総合的歩行能力)
・座位ステッピング (筋持久力)
・「Timed Up & Go」(下肢筋力や歩行能力)
② バイタル
・収縮期血圧
・拡張期血圧
・安静時心拍数
③ 体形および体組成
・筋肉率
・体脂肪率
・体重
・BMI
④ アンケート調査(主観的評価)
・日常生活動作能力:電話、買い物、食事の準備、家事、服薬管理、移動能力など
・主観的健康観
・精神健康度
全体 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
人数 | 120人 | 31人 | 89人 |
年齢範囲 | 59~95歳 | 59~95歳 | 60~95歳 |
平均年齢 | 80.6歳 ±6.5歳 |
81.0歳 ±7.6歳 |
80.4歳 ±6.1歳 |
要支援1 | 31 | 4 | 27 |
要支援2 | 27 | 5 | 22 |
要介護1 | 26 | 6 | 20 |
要介護2 | 24 | 10 | 14 |
要介護3 | 7 | 4 | 3 |
要介護4 | 5 | 2 | 3 |
結果
※Pre:利用開始時、Post:利用3ヵ月後、N:母集団の大きさ、Mean:平均値、SD:標準偏差(ばらつきの程度)、P値(0.05未満であると、有意差があることを示す)
バイタル
体重・血圧・心拍数の変化 | ||||
---|---|---|---|---|
N | Mean | SD | P値 | |
体重(kg) | Pre 120 | 53.0 ± | 10.6 | 0.24 |
Post 120 | 52.8 ± | 10.3 | ||
収縮期血圧 (mmHg) |
Pre 120 | 137.9 ± | 16.2 | 0.00 |
Post 120 | 133.5 ± | 16.6 | ||
拡張期血圧 (mmHg) |
Pre 120 | 67.9 ± | 12.6 | 0.03 |
Post 120 | 65.7 ± | 12.2 | ||
心拍数 (拍/分) |
Pre 120 | 78.8 ± | 11.2 | 0.06 |
Post 120 | 77.1 ± | 10.3 |
体力テスト
全体評価
移動能力として重要な指標である「歩行速度」「椅子立ち座りタイム」「歩幅」「歩幅」、そして「握力」「座位ステッピング」「ファンクショナルリーチ」が有意に向上した。
体力測定結果(全体の変化) | ||||
---|---|---|---|---|
N | Mean | SD | P値 | |
握力(kg) | Pre 120 | 18.4 ± | 5.6 | 0.02 |
Post 120 | 18.9 ± | 5.7 | ||
ファンクショナルリーチ (cm) |
Pre 111 | 20.5 ± | 7.0 | 0.00 |
Post 111 | 22.7 ± | 7.4 | ||
開眼片足立ち (秒) |
Pre 103 | 12.9 ± | 16.5 | 0.29 |
Post 103 | 14.3 ± | 18.7 | ||
長座体前屈 (cm) |
Pre 75 | 26.9 ± | 9.4 | 0.05 |
Post 75 | 28.6 ± | 9.7 | ||
歩数(歩/5m) | Pre 117 | 12.5 ± | 3.5 | 0.04 |
Post 117 | 12.0 ± | 3.3 | ||
歩行速度 (m/分) |
Pre 117 | 79.3 ± | 26.8 | 0.01 |
Post 117 | 83.6 ± | 26.0 |
N | Mean | SD | P値 | |
歩幅(cm) | Pre 117 | 42.2 ± | 9.8 | 0.00 |
Post 117 | 44.1 ± | 10.5 | ||
ピッチ (歩数/秒) |
Pre 117 | 1.9 ± | 0.5 | 0.88 |
Post 117 | 1.9 ± | 0.3 | ||
椅子立ち座りテスト (秒/5回) |
Pre 108 | 16.3 ± | 7.9 | 0.00 |
Post 108 | 14.1 ± | 6.0 | ||
座位ステッピング (回/15秒) |
Pre 118 | 12.6 ± | 4.3 | 0.00 |
Post 118 | 14.5 ± | 5.3 | ||
「Timed Up& Go」 (秒) |
Pre 116 | 16.3 ± | 11.2 | 0.59 |
Post 116 | 16.0 ± | 15.2 |
要介護度別評価
全体評価では上記項目が向上傾向にあるなかでも、特に「歩行速度」「椅子立ち座りタイム」においては、要介護度に関係なく同様に向上した。
疾患別評価
疾病区分に分類した場合においても、介入前後で主に以下のトレーニング効果が見られた。
疾患別で比較しても、疾患に応じてそれぞれ身体機能の改善が見られた。
特に、軽度認定者に多く見られる整形疾患の対象者においては身体能力向上の効果が幅広くあらわれた。
疾病区分1:脳梗塞既往等があり、四肢のいずれかに麻痺がある対象者
疾病区分2:パーキンソン病の既往のある対象者
疾病区分3:腰、膝、首等いずれかの整形疾患がある対象者
疾病区分4:疾病区分1から3の既往がない対象者
アンケート調査
1. 日常生活動作能力:8項目中以下2項目に有意な改善が見られた。
・移動能力(主に移動手段の変化:ex杖利用→杖なし 等)
・服薬管理能力
2. 精神健康度:13項目中以下、4項目における自己評価の値に有意な改善が見られた。
<最近2週間の生活において>
・明るく楽しい気分で過ごした
・落ち着いたリラックスした気分で過ごした
・日常生活の中に興味あることがたくさんあった
<この1ヶ月間>
・どのくらい元気であったか
結論
リハビリデイサービスnagomiで実施している運動器機能向上プログラム(ここちヨガ・イスdeエクササイズ)は、介護予防のためのトレーニングとして週1,2回の利用で、特定高齢者よりもさらに体力レベルが低い要介護認定を受けた高齢者に有効であり、要介護度別・疾患別で見てもトレーニング効果が得られることが示された。
また、新規利用者で、3ヶ月間の利用回数が10回以上であった方が87.0%であり、利用率が高いと考えられる。
上記のような体力向上に伴い、ADL(日常生活動作)が改善し、精神健康度も改善される傾向が示されており、リハビリデイサービスnagomiの利用によるトレーニングがQOL(生活の質)の向上に大いにつながった可能性が考えられる。